空調服を買った

空調服とは、小型のファンを服に組み込み、服の内部に空気を取り込んで風を循環させることで、炎天下でも比較的涼しく快適にいられることを意図した衣服であり、「空調服」は株式会社空調服登録商標であって、他社製の類似製品は「ファン付きウェア」などと呼ばれることが多い。ということはつまり、空調服は買っていなかったですね。本当にありがとうございました。

 

私が買ったのは、㈱空調服のものではなく、ワークマンのPB的なもの。だから「空調服」ではないんだけど、「ファン付きウェア」とか長いし何を差しているのかもわかりにくいので、この後も当たり前のように「空調服」と書き続ける。

 

 

 

 

購入までのあれこれ

社内でも数年前から空調服を利用する人はちらほらいたけれども、この夏、若いリーダーの一人が購入し、その効果を絶賛したことから一気に広まり、例に漏れずに私も購入に至った。

社内ではBURTLEが人気だった。webで軽く調べてみても、BURTLEの今年の新製品は出力もバッテリー容量も大きくて云々という話が出ている。でも、社内でかぶるのはちょっと嫌だなあという気持ちがあった。

まず、ロイヤルホームセンターに向かった。大きなホームセンターに行けば、多数の商品から比較検討できるだろうと思ったからだ。でも、無かった。噂のBURTLEの新製品(高い)と、どこか忘れたけどもう一製品(在庫サイズが少ない)があったに過ぎない。パッケージングされていて試着ができなさそうなことも気になった。実際には声をかければできたのかもしれないけど、声をかけて試着させてもらった上で、サイズが合わない以外の理由で購入しないという選択をとることが私にはできそうにもなくて、一旦撤退してワークマンに向かった。

ワークマンには多くの空調服が置かれていた。そのほとんどが自社ブランドのもので、ごく僅かに他社ブランドも置かれていたに過ぎない。そしてワークマンブランドのものと比べてしまうと、どうしても他社製は高く見えてしまう。カタログ性能に大差はなく、実際の性能の差はわからない、価格は自社ブランドが優位、品揃えは圧倒的となればワークマン品を買わない理由がない。

 

 

ワークマンの空調服について

ワークマンの自社ブランド、WindCoreの空調服の特徴は、ウェアとファン、バッテリーがそれぞれ別売りであり、ウェアの種類が豊富であることだろう。ファンとバッテリーは、事実上1種類と言っていいんじゃないか。*1

バッテリー容量はBURTLEと比べると小さめの6700mAh。でも12Vで使えば基本的には一日保つ。*2 ではあるんだけど、昼休みも使い続けていたり、残業になったり、ゴミなどでファンに負荷がかかったりすると一日保たなくなることもある。

より問題なことには、充電に6時間超かかる。帰宅→出勤のタイミングによってはフル充電できないこともある。なので私は、購入から1週間のタイミングでバッテリーを買い増した。

それと同時にウェアも買い増した。

もともと購入していたのはWZ6750、新たに買ったのがWZ2900。前者は遮光性が高く風もよく通る厚手の素材、後者はより薄くて軽い素材で作られている。どちらも袖なしの、フード付き。脇を冷やすためには袖があったほうがいいと思っていたが、各種レビューであまり大差はないとの意見が大勢で、むしろ空気で膨らんだ袖は邪魔になるとの声もあったので、袖なしベスト型を買うことにしたのだ。フードは、ヘルメットをかぶる際にあると俄然涼しい、使わなくても邪魔にはならないと言われたのでフード付きにしたが、あっても無くてもどっちでもいいなというのが正直なところ。

 

さて、使ってみての実感。これがめちゃくちゃ涼しくて快適だ、というわけでもないから難しいところ。

まず、購入後に家に帰って使ってみるわけだ。すると全然涼しくない。冷房の聞いた部屋の中で、何の作業をするでなく着てみたところで効果を実感はできない。動いて、汗をかいて、そこに風を送って気化熱が発生してはじめて涼しいものだからだ。

かといって、外で体を動かしているとき、空調服を着れば快適なのかと言えば、そんなことはない。空調服を着たところで暑いものは暑いのだ。マシになったに過ぎない。でも、遥かにマシになる。汗のかき方が全然違う。ズボンがびしょびしょにならない。歩いた後に水溜りができていたのと比べれば大きな変化だ。だから空調服があるなら使うべきなのだ。

だからといって何万円も払って買うべきだと勧められるだろうか。一式揃えるのに2〜3万円。予備バッテリーや替えのウェアを買うならさらにかかる。毎日充電する手間もある。破け、断線、水濡れなどのトラブルもありがちだ。実際に私のファンも接触不良に遭った。

 

 

ワークマン店舗の神対応

空調服を買ってから2週間ほどか。使用中にファンが止まることが度々出てきた。プラグを手で押さえたり、向きを変えたりすると再び動き出すからおそらくはプラグの接触の問題だろう。何日かは気にせずそのまま使っていたがだんだんと途切れることが多くなり、ある日プラグを見ると形状が変わっていた。ファン側にあるべき中心のピンがプラグ側に付いてしまっている。

これはさすがにマズいだろと思い、メーカーに電話する。返品ができないかわりにメーカー6ヶ月保証が付いているとの説明が購入時にあったのだ。保証書にはメーカーのフリーダイヤル記載がある。そちらに掛けて修理or交換を求める。早速着払いで送ってくれ、状態を確認し、保証対象であれば新しい製品を送り直す、と言う。

なるほど合理的な対応だ。しかし待ってくれ。それではこちらか送って、状態を確認して、送り直して、それを受け取れるまでの間、私は空調服無しで過ごさなければならない。夏の一番暑い時期に、その暑さ対策が使えない。3万円以上を支払ったのに。そんなことある? いや、待ってくれよ、それは無茶だろ、なんとかしてくれよ。しかし弊社ではそれ以上の対応はできかねます、と電話口の方は言う。冷静に考えればそりゃあそうだろう。でも、それでもなんとかしてくれよ。弊社では対応できかねますが、販売店さんに相談なされてはいかがでしょうか。なるほど、そうきたか。販売店に、つまりはワークマンにそんなことを言ったところで何か結果が変わるとは思えないけど、彼もこれ以上クレーマーに絡まれてもたまらないだろうし、まあ次善の策だろう。私としても粘ったところで何が得られるようにも思えなかったので、購入した店舗に電話を掛け直す。

メーカーでこんなこと言われたんですけどどうにかできませんか?と。それじゃあこちらからメーカーの営業さんに相談してみますね。という予想外に好感触な返答が得られた。さらに、店舗から折り返しがきて、本当はメーカーさんで物を確認してから替えの製品を送り直すんですけど、こちらまで持ってきていただいて店舗で不具合を確認できればその日の内にメーカーから発送します。それでも受け取りまではラグが出るので、その間はこちらのテスターをお貸し出しします、とのこと。つまりは、店舗まで持って行って、再度受け取りに行く時間と手間こそあるものの、空調服を使えない期間を一切挟まずにメーカー保証を受けられるとのこと。神じゃん。神はワークマンにいたのだ。これぜったいホームセンターとか通販で買ってたら得られない便益じゃん。

帰ってきたファン、というか実際にはまったく新しい別物なんだけど、今までこんなに高出力だったっけ? というくらい快調にはたらいてくれる。以前のファンがもともと弱かったのか、接続が不良になってからの印象ばかりが残っているせいなのかはわからない。いずれにせよ現在では快適に使えている。

 

 

これは何ら根拠ない推測の話でしかないんだけど、たぶん汗じゃないかと思うんだ。汗がプラグ部分で良くない接触を招いたんじゃないかと思っている。もしそうだとすると、今後も不具合は起こり続ける。空調服が乾かせる以上の汗をかけば、いつショートしてもおかしくはない。必然的に起こる故障なのかもしれない。もしそうだとしたら、数万円掛けて空調服を買うことに本当に意義はあるんだろうか。

こういう風に書くと、空調服を買うべきではないと言っているみたいだな。そうじゃないんだ。意義のある商品だと思っているし、だからこそバッテリーとウェアを買い足している。だけど、空調服に言及されるとき、称賛一辺倒になりがちなことが気にかかっている。耐久性が万全とは言えず、リスクはあるのだ。

*1:異様に容量の小さいバッテリーとか、特別に性能が高いわけでもなく他との互換もないセットとかが無いわけではない。

*2:たぶんマイベストのレビューは、普通は選ばないハーフバッテリーを使ってバッテリー性能を酷評しているんじゃないかしら。