耳鼻科に行った話

咳があまりにあんまりなので耳鼻科に行った。耳鼻科、というか耳鼻咽喉科なんだけど、何故か耳鼻科と言ってしまう。咽喉科を伴わない耳鼻科は存在するんだろうか。概念上の耳鼻科……。

一ヶ月近くのあいだ、咳が止まらないでいるのだけれど、他にこれといった症状があるわけでもない。決して重症でないのはわかっているし、そんな症状に対して耳鼻科医が何ら解決策を示してはくれないこともわかりきっている。だからこれまで医者にかかろうという気持ちにはなれないでいたんだけど、あまりにあんまりなので流石に耳鼻科に言ってきた。もちろん結果としても、どうということもなかった。さも驚きの事実が明かされるフリかのような文章になってしまったので早めに書いておく。何もなかった。

強いて言えば、レントゲンを撮られたくらいか。今まで耳鼻科でレントゲンを撮られたことがないので少し驚いた。新型肺炎の疑いからなんだろうか。この医院ではそれ以前からレントゲンを撮っていたのかどうかはわからない。とにかく、2階のレントゲン室へ行くよう指示され、そこで上半身の服を脱ぎ、レントゲンを撮った。PCRなどの検査では数時間程度を要するが、レントゲンはほんの数分で結果が出る。何ら異常のない肺だった。私はレントゲンなんかよりも、霧化させた薬剤を吸引させられるあの機器を使ってもらいたかったけれど、診療室のスミにひっそりと佇んではいるものの、他の患者にも使用されている形跡はなかった。

それともうひとつ、初めての経験だったのは、待合室で補聴器メーカーらしきスーツの人が、患者であろう人たちの補聴器のメンテナンスらしきことをしていたことだ。そんなにずっと見ていたわけでもないので、やり取りをしていたおばあちゃんが耳鼻科にかかっている患者であるのかどうかは定かではない。消耗品らしきものを購入してスーツの人に代金を支払っているところは見た。なので、彼の活動は医院とは別主体であり、だけれども(おそらくは)医院の認可のもとで営業活動を行っているんだろう。彼が年がら年中いるのか、特定の日だけいるのか、あるいは予約でもするのかはわからないけど、まあたしかに客層は重なるし、待合室は広すぎるし、合理的な取り合わせかもしれない。とはいえそんなに頻繁に対象者が来るような気もしないんだけど、どれだけの人が来れば採算が取れるものなんだろう。

処方箋をもらって医院を出たところで、"お薬手帳"というフレーズが浮かんだ。たぶん家のどこかにあるはずだ。なので家に帰って探して、探して、探したら見つかったので、薬局へ持っていったら、うちにはその処方薬はないから、処方箋出した医院の近くの薬局に行ったほうがいいよ、って言われたのでまだ薬をもらえていない罠。