コンビニでトイレのドアを開けたら、おっさんが立っていた。鍵くらい閉めろよと思いながらも、すみません、と一言詫びてドアを閉めようとすると、おっさんに呼び止められる。これ、どうやって流したらいいんですかね、と。
水洗トイレの洗浄というのは昔からレバーを捻ればそれで済むはずのものだ。あるいは、昔はそれで済むものだった。しかし時は令和、水洗トイレにも自動化の流れが来た。もはや物理レバーなど無い。壁を見れば、「立ち上がると自動で流れます」の文字。もはや人類がわざわざトイレのレバーを捻る必要なんてない。
だがしかし、だ。おっさんは便座に腰掛けて用を足したりしない。座ることがなければ、立ち上がることもないのだ。自動で流れるはずのトイレは流れないまま。いったいどうしたことか。鍵をかけるまでもなく秒で出るはずだったトイレを、おっさんはいつまでも出られないままでいたのだ。
温水洗浄便座の操作パネルをのぞき込む。「おしり」「ビデ」「とめる」と書かれた3つのボタンが堂々と鎮座している。その下には小さく、水量やら温度やらを調整できるボタンが並ぶが、流すボタンは見えない。おそらくは、流す機能を持たない機器のデザインを流用したものなのだろう。あるいは、デザインを共通化したほうが使い勝手が良かろうという思想があるのかもわからない。
視線を少し上に向ける。すると壁にはテプラが貼られ、「流すボタンはこちら」との記載。操作パネル上側面に流すボタンはあったのだ。「ここですね」と、さも最初から知っていたかのように私はボタンを押す。そうしてトイレは流れ、おっさんは何度も礼を繰り返し、スキップでトイレを出て行く。コンビニ店内には割れんばかりの拍手。鳴り止まない歓声の中、私は冷静を装いながら用を足したのだった。という話をThreadsに書いたら、「閲覧10万件以上を獲得しました」とか通知が来てビビる。
さらに驚くべくは、17万超の表示がありながら、再投稿は1、いいねは11に過ぎない。つまりは、アルゴリズムが勝手に他人のタイムラインに流し込んで、しかしそれを見て心動かす人はほとんどいなかったのだ。
Twitterの横暴が酷いと皆が口をそろえて言うが、その悪いところだけをさらに煮詰めたのがThreadsであると言っても過言ではあるまい。*1 他方で、MastodonやMisskeyは過疎である。人が少ないからトラブルも少ないが、そこで快適な交流が、有意義な情報が、誰もに開かれているかというと、頷きかねる。Blueskyは比較的良好であると言われる。しかしそれは、Mastodonよりは活気があり、まだTwitterほどにはevilではないというだけに過ぎない。
そこでmixi2である。このごくTwitterライクなサービスが、案外と良くできていると言わざるを得ない。
mixi.social
mixi2は、Twitterライクな短文投稿型ソーシャルサービスであり、タイムラインにはフォローした人の投稿が時系列に並べられ、知らん人のバズりそうな投稿が勝手に埋め込まれたりはしない。そして、さらに大きな特徴は、リアクション機能であり、またはコミュニティの機能だ。
リアクションとは言わばスタンプであり、一般的な絵文字の他に、4文字程度の感情表現をデザインしたものが豊富にあり、投稿への反応のほとんどはそれだけで完結させることができる。もともとが短文投稿を基本としているので、そんな長ったらしいリアクションなど誰も最初から求めちゃいないんだ。でも、求めちゃいなくても糞リプのやってくるのが現代のインターネットであり、そこで糞リプのモチベーションを削ぎ落とす施策がこの豊富なリアクション機能なんだろう。
一度はTwitterを離れたけど、自分の好きなものの情報がTwitterからしか入ってこないからとTwitterに戻っていく人も少なくないと聞く。それを繋ぎとめるものがコミュニティ機能なのかもしれない。好きなコミュニティに参加すれば、それに関する情報はどんどんと流れてくるし、あるいは自分でコミュニティを立ち上げることも容易だ。今はまだ人が少なく、ニッチなコミュニティもなかなかないだろうが、ある程度育ってくれば化ける機能になるだろう。おそらくは万人に向けた広告よりも、高い単価で広告を売ることができそう。そも広告を入れる気があるのか、どういうビジネスモデルなのかもよくわからないところではあるけれども。
こうして特徴を挙げてみると、mixi2は表面的にはTwitterのようだけど、その実はDiscordに近いのかもしれないなと思ったりもする。Discordも、随分とコストのかかりそうなサービス運営をしているけども、どういったビジネスモデルなんだろう。ニトロ云々がそんなに売れているとも思えない。