鯵の一夜干し

例に漏れず、弊社も圧倒的な人手不足であり、久しぶりに現場に出ているわけです。現場仕事自体は決して嫌いでないので一向に構わない。ただ私が現場に出てばかりでは会社の利益にならない。現場で一人で人の3倍の仕事をこなすスーパーマンなら良かったかもしれないが、生憎一人分の仕事しかさばけない。一人分をしっかりさばけているのかも定かではない。
 
私はね、頭を使った研究をするよりも、こうして体を使う仕事のほうが向いてたんじゃないかと思うんだよ。
 
学生時代、発掘に行ったときの教授の言葉が思い出される。当時は、このおっさん何言ってるんだと思った。お前は体なんか使ってないじゃないか。もう少し働けよ、って。でも今は少しだけわかるような気がする。
まず、いつもと違った仕事をするというのは気分がいいものだ。何をしていいのかわからずに右往左往するレベルでさえなければ、いつもは使わない筋肉を、いつもとは違った脳の部位を使うことは、なかなかに気持ちのいいものだ。同じ仕事をこなし続けたほうが効率が良いというのも理論上は正しいのかもしれないが、それだけではマンネリ化してしまい、仕事がどんどんとつまらなくなっていく。たまには気分転換をはさんだほうがメンタルに良い。
それに、現場仕事をしていると、自分が働いたんだという気がしてくる。終わらないタスクを減らしては増え、減らしては増えと繰り返していくのとは違い、現場ではたしかに仕事をした成果が目に見える。その日の終わりに、ああ今日はよく働いたという充実感が得られる。フィジカルな疲労感が、それをさらに後押しする。
 
私がわかったような気になっているだけで、あの時の教授がどんな心境だったのか、本当のところはわからない。わからないけど、私自身はそう感じている。つまり、私は現場仕事のほうが向いているんじゃないかと思えてくるが、それはきっと勘違いだろうということだ。