いつもはだいたい1ヶ月半くらいのペースで髪を切っているんだけど、今回はいろいろあったり、実はそうでもなかったりで、気付けば2ヶ月半髪を切っていなかった。いい加減邪魔くさくなってきたし、もう奔放さを演出するような年でもないので、重い腰を上げて髪を切ることにした。
やっぱり間があいたから「お久しぶりです」とか「伸びましたねえ」とか店員さんに言われるわけだ。
どうしよう、これ"美容師"って書くのがなんかわかんないけどすごい恥ずかしくて"店員"って打っちゃったけど、その言い回しのほうがどう考えても不自然でかえって恥ずかしいわ。まあ美容師のお兄さんに言われるわけだよ。「お忙しいんですか」とか、「髪伸ばすんですか」とか。いやあ、そういうわけでもないんですけど、ちょっと面倒くさくて、とか答えちゃうわけだ。「じゃあ今回ちょっと思い切って刈り上げてみますか」とか軽い感じで振られるから、ああっいいっすねえ、とか適当に答えちゃうわけで。
お兄さんの腕は信用しているし、数年ぶりに刈り上げることにそんなに不安はなかったんだけど、やっぱりいくらかの緊張感はある。スマートフォンを覗きながらも、ちらちらと目の前の鏡に目が行く。切ってる途中の鏡を見たって、完成形じゃないんだから私みたいな素人にはよくわからない。でも、よくわからないんだけど、なんか"いかつい"。こういう人よく不動産屋にいる。不動産屋の奥から出てきて、不自然な高い声で喋りそうなおっさん、ブルーのシャツにピンクのネクタイをしていそう、絶対タイピン付けてるし、たぶんカフスボタンのおっさんが鏡の前にいる。ああ、これはダメなやつだ。もうサイバーカラテだバイオカラテだといっている場合じゃなかった。ちょっとお兄さんを信用しすぎたのかもしれないな。そんなことを思っていたんだけど、やっぱり彼はプロだった。ひと通り切り終えて、前髪(というほどの長さもないけど他に言い様もない)を軽く流すとそれだけで印象が全然違う。全然いかつくない。こんなちょっとの違いで、こんなにも違ってくるものなのかと驚いた。お兄さんの脳内にははじめからそのイメージがあったんだろうからプロはすごい。
それで一晩明けた昨日出勤すると、髪切ったんですねって言われる。まあ普通言われるだろうとも思うんだけど、よくよく思い起こすとここ一年くらいはそういうこと言われていないような気もする。そうか、髪を切っていることに今まで気付かれていなかったんだ、ということにようやく気付いた。