解雇規制が雇用の流動化を阻んでいるという都市伝説

明日は台風で仕事が暇になるので、夜更かししながら久しぶりにブログを書く。

 何についてでも良かったんだけど、河野太郎のブログがちょうどTLに流れてきたので、これを肴に書き殴っていくことにする。 

河野太郎雇用特区推進というのは正直に言って少し意外だった。よくよく考えれば彼は概して小さい政府・規制緩和派なので、特区に積極的であってもそう不思議な話ではないのだけど。

  

雇用特区について|河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり

フィナンシャルタイムズは「日本の労働法では正規職員の解雇はほぼ不可能。企業は非正規職員をますます雇用し、エコノミストが『二重労働市場』と呼ぶ状況を生み出している。」と書いている。 

 

 雇用特区案の正当性を謳う上で挙げられた、厳しい労働法によって日本では解雇が事実上不可能になっているという話。

  

日本の労働法は厳しい。

労働時間は原則として最大40時間/週と定められていて、労使協定がないと残業すること自体ができない。もちろん協定を交わせば残業も可能になるが、時間外はすべて割増賃金となり、営業職などのみなし残業でもみなし時間を超えたことが明らかな場合には、さらに時間外賃金を支払わなければならない。一度雇った従業員は、正当な理由なく解雇はできない。社会保険や労働保険は会社も折半しなければならないし、所得税含めすべて手続きは会社が行わなければならない。

 解雇が事実上不可能であるという点もそう間違ってもいない。俺が以前に働いていた意識の高い糞ベンチャー企業はお構いなしにどんどん首を切るけど、普通の会社ではそうはいかない。リアルの知人で仕事を首になった人なんて一人も知らない。

労働法では解雇が可能となるのは以下の3つの型に限定される。

ひとつは普通解雇。無断欠勤だったり業務命令に背いたり、病気や怪我で仕事を続けることができなくなった時に該当する。ふたつ目は整理解雇、いわゆるリストラ。人員削減が必要で、他の措置も取ったけどやむを得ない場合にだけ可能となる。そして最も重い懲罰としての懲戒解雇。(参考:解雇(普通解雇・整理解雇・懲戒解雇)大阪労務管理事務所)

 

たしかに労働法は厳しいし、従業員の解雇は難しい。でも、その間にあるのは因果関係ではない。

 

厳しい日本の労働法はザルだ。

法に定められた通りの残業代を正確に受け取っている人はどれだけいるだろう。R25によれば7割以上のサラリーマンがサービス残業をしているという。労働法規がどれだけ綺麗事を謳っていても、現実にその条文は守られていない。名ばかり管理職なんて糞食らえだ。

 一方で解雇の現実は法律以上に難しい。

実際には整理解雇が可能な状況でも、会社が解雇に踏み切ることはそう多くない。それゆえ社内ニートが生まれたり、ひどい場合には追い出し部屋が話題になったりする。

会社が従業員の首を切らないのは法律如何の問題ではない。ひとつには訴訟リスクがあり、他方では新規採用や社内モチベーションへの悪影響が大きい。(参考:世代間格差は「解雇規制の緩和」では解消されない | SYNODOS -シノドス-)

労働法が従業員の解雇にもたらしている影響力は小さい。

日本の企業にはそもそも労働法を遵守しようという意志はほとんど見られず、解雇が行われにくいことと労働法の寛厳には関係性が見出だしにくい。雇用特区に意義があると考えることは不可能に近い。