読んだ。
そもそも書店員におすすめの本を相談するお客様ってどのくらいいるのだろう? 本の場所はよく聞かれましたがおすすめの本の相談ってほとんどありませんでした。特集コーナーやPOPで伝えているということなのかもしれませんが、あれもしっかり考えてというよりもその場しのぎで業務に追われてとにかくやったという印象です。
本の良さを伝える余裕はどこにもなかったです
もちろんアルバイトだったら聞かれたら答えればいいだろうし、読んだ本のことだけ語ればいいだろう。でもきっと書店員はアルバイトだけじゃないだろう。正社員とかそれなりもポジションの人間が必ずいるはずだ。彼らも同じように客に聞かれたことだけやっていればいいのかという話で、当たり前のようにそんなことはないわけだ。
たとえば洋服を買うのであれば、店で商品を見ていたら、客が質問なんてしなくても、当たり前に店員が話しかけてくる。店員は客に話しかけられるまで待っていなくてはいけないなんて決まりはない。声をかけられることを嫌がる人も少なくないだろうが、それでもかけた方が総じて売上につながるから店員は話しかけてくる。
もちろんアパレルと書店では、単価も粗利率も違う。同じ手法で接客をしても利益が増えるとは思えない。そこで、書店ではPOPが使われがちになる。
POPも声がけと同じだ。店から客に話しかける。どんなアイテムをお探しですか?今はこちらが人気です。これが好きな方ならきっとあちらも気に入っていただけます。それを本部が作るというのは実に合理的な手法だ。自動ドアが開いて店に入るといらっしゃいませの声がスピーカーから流れてくるようなものだ。無音の空間よりはずっといい。でも、店員がいるのなら店員が声をかけた方がもっといい。
同じチェーンであっても店によって客層は違ってくる。サラリーマンが多い地域もあれば、学生ばかりの地域もある、ふらっと立ち寄る客が多いかもしれないし、目当てのものを探しに来る客ばかりかもしれない。客層が違えば、陳列も変わってくる。オフィス街にレシピ本を置いても仕方ないし、学生街にビジネス書を置いたって売れやしない。店ごとに棚作りが違うなら、そこで商品の勧め方が同じになるはずがない。
勧めようにも本を読む暇が無いというのはもっともらしい言い訳だ。しかし読んだ本しか勧められないというのは、販売業としてあまりに情けない。保険屋が様々な保険に加入した上で良い商品を勧めているわけがなく、不動産屋はいったいどれだけの家を移り住まなければならないことか。もっと単価の安い商売でも、金物屋だってステンレスとセラミックとを使い比べた上で鍋の良さを語っているわけではないし、八百屋も中国産のものより美味しかったことを確認して群馬産のトマトを売っているのではない。それは商品の特性を知識として持っていれば十分だ。一冊全部を読まなくたって黒川博行を売るためのPOPくらい書けるべきである。もちろんPOPにこだわる必要はなく、某店長は棚作り自体が意思表示なのだと言っているし、ただそうした店作りの方がさらに難しそうではある。
べきであるとか正論らしいこと投げたって、実際にできないから問題なんであって、どうしてできないのかと言えば元リンクでは忙しいからとされている。実際どれだけ忙しいのか知らないが、仕事量が多過ぎればできる仕事もできなくなるのも当然ではある。小規模書店でそれができないというのは仕方ないことなのかもしれないけど、大チェーンでは他に割いているリソースをもっと店作りやマーケティングに向けて欲しいところ。もちろん合理的経営は必要なのだけど、合理化ではどうやったってAmazonに敵うわけがない。そして、Amazonにもっとも対抗できているのがTSUTAYAであるという事実。(書店売上ランキング 2012年 寄稿:冬狐洞 隆也 氏:【 FAX DM、FAX送信の日本著者販促センター 】) 見える範囲だと個人経営店ほどそうした主張の強い店作りができていることが多い印象を受ける。もしかするとできていない店舗はどんどん姿を消しているのかもしれない。