総合的俯瞰的な観点とは

「総合的俯瞰的活動を確保する観点」から法律に基づいて任命を行ったときに、「総合的俯瞰的」なのは「活動」であって、その主体は会員(候補)だと思ってたんだけど、首相が主体であるかのような言論が多くて、だとすると「総合的俯瞰的」は「観点」に掛かっているんだろうか。そんな無理のある形容の仕方するか?と思ってググると、やっぱり菅氏は「総合的俯瞰的活動」って言ってるんだよね。*1 それが具体的に何を意味するのかは結局わからないんだけど、少なくとも「総合的俯瞰的」なのは首相の観点ではなくて、会員の活動であることは明らかであるのに、それを無視したいい加減な批判がけっこうあって、そういう仕方は筋が悪い。相手の手続きを批判するのであれば、正しい手続きをもって批判したい。

 

正しい解を得るためには、正しい問い、正しい批判が必要だと思っている。私はたまに、正義のテロリストが問題を明るみに出すために過激な手段を取ることはやむを得ない、といった言い方をすることもあるけれども、それは、そうした手段を取る以外に問題を明るみに出すことができないからであって、もはや白日の下にある問題に対して用いるべき手段ではない。ましてや、情報発信力を持つ報道機関が行っていいことではない。愚かなネット言論で「総合的俯瞰的な観点」が持ち出されるのはいくらか仕方がないところもあるけれど、報道においては「総合的俯瞰的」なのは首相の観点ではなく会員の活動であるようにきちんと報じるべきだし、ミスリードがあったらきちんと訂正してほしいところ。

 

 

*1:

日本学術会議については、省庁再編の際、そもそもその必要性を含めてその在り方について相当の議論が行われ、その結果として総合的、俯瞰的活動を求めることにした。まさに総合的、俯瞰的活動を確保する観点から、今回の人事も判断した。このようなことを今後も丁寧に説明していきたい」学術会議の新会員任命見送り、学問の自由と関係ない=菅首相 | Reuters