今日、仕事帰りに宇宙の音がした。
その音に驚いて振り返ると、車が駐車場に入ろうとしているところで、宇宙の音はその車から聞こえてきていた。最初は、どこか不良を起こしているのかとも思ったけれど、どうやらバック音として鳴らしているらしい。私は携帯電話を取り出して、「宇宙の音が聞こえると思ったら、車のバック音だった」とツイートしようかと思ったけども、宇宙の音なんていっても誰にも伝わらないことに気づいて、携帯電話をしまった。
宇宙の音は、高校の部室にあった、印画紙を乾かす乾燥機を起動すると聞こえてくる音だった。乾燥機は当時から既に古びていた。電源を入れると、ウーっと低い音がだんだんと高くなっていく、SF映画でなんらかの高尚な機械を起動させたような音がした。それが宇宙の音だ。
おんぼろの乾燥機がどうしてそんな音をさせるのか。それはNASAが開発した乾燥機だからである。より正確には、宇宙を感じさせる音を出すからその乾燥機はNASAが開発したことにされた、というのが正しそうなところではあるが、もはや事実などという些事はどうでもよく、乾燥機をつけると宇宙の音がしたということが重要なのだ。
そんな宇宙の音が、十数年ぶりに聞こえてきたのだ。