マスクをスマートに外せない

どこに行くにもマスクをつけていないといけないような風潮があって、どこに行くにもマスクをつけているんだけど、そうはいってもマスクを外さないといけない場面というのもある。

たとえば歯医者だ。マスクを外さないと診療を受けることができないので、必ずどこかのタイミングでマスクを外すはずなんだけど、それがどのタイミングなのかが難しい。待合室では小さな子ども以外は誰もがマスクをつけているので、きっとここではまだつけているべきだろう。そして、名前を呼ばれて、診察室へ向かう。たぶんこのタイミングで外すのがベストなんだろうと、何回か通った今ではわかる。でも、初回ではわからなかった。診察室へ入って、すると荷物をカゴに入れるよう、そして椅子に座るよう案内される。座ると前掛けを付けられ、うがいをするようコップを渡され、そのときにようやくマスクを外すべきだったのだと気づく。でもすでにバッグは手元を離れていて、今外したマスクをこれはいったいどうするの? ポケットに入れるの? まあ他にどうしようもないからポケットに入れるわけだけれど、ポケットに入れたマスクを後でもう一度つけることにはちょっとした心的抵抗が無いわけでもない。でもまあそうするしかないからするんだけれども。

 

歯医者は口を開けるので、マスクを外さなかればならないということに気づけたので、まだ良かった。美容院ではまったく気づかなかった。

今日はどうしますか。いつもと同じで。じゃあまず髪を洗いましょう、みたいなやりとりの後でシャンプー台(?)へ移動する。そこでタオルとか巻かれながら、「マスクはつけたままのほうがいいですか?」と聞かれる。特に拘りはないけれど「外したほうがいいんですか?」と聞いてみると、「耳もと濡れてしまうんで……」と返ってくる。なるほど、気づかなかったが、言われてみるとそのとおりだ。その場でマスクを外して、やはりポケットにしまう。

きっと髪を切っているときにもマスクの紐は邪魔になるだろうから、マスクはつけないほうがいいんだろう。それならそうと言ってくれてもいいんじゃないかと思ってしまう。数ヶ月に一度髪を切りに行く程度の人間に、マスクをどう扱うべきなのかなんて、言ってくれないとわからない。そんな話を職場で愚痴ったら、ずっとマスクをしていたい人に対してはそうした対応を取るらしいと聞く。つまり、マスクを外したくないのなら、ヒモだけ耳から外してテープで止めるそうだ。だから「ここでマスクを外してください」とは言えないんだろう。面倒くさい。