増田を読んで、これはもうちょっと書いておいたほうがいいかなと思った。
カツカレーについては以前にこう書いている
たとえばカツカレーという料理がある。カレーにカツを載せるという素晴らしい料理だ。カレーはカレーだけでも美味しく、またカツはカツで美味しい。そのふたつを掛け合わせる。するとどうしたことか、カレーの美味しさとカツの美味しさを合わせたものよりもずっと美味しい何かが生まれる。何かというか、それがカツカレーだ。最初にカレーにカツを載せた人間は天才だ。どうしてこれほどの美味しさが生まれると想像することができただろう。しかし、だ。カツカレーであってもまだカレギューの美味しさには敵わない
対してカツにはカレーが必要だ。カツとカレー、両者の間で美味しさの相乗効果があるとしても、その一部はカツを食べるためのソースとして消費される。しかしカレギューは違う。カレーだけで食べても、混ぜ合わせて食べても、牛だけで食べても美味しい。その割合の違いによって異なる美味しさを味わうことができる ■ - 殴る壁
カツカレーというのは素晴らしい料理である。カツとカレー、それぞれの美味しさの合計以上の相乗効果がカツカレーからは得ることができる。カレーには足りない旨みや歯ごたえを得られ、カツには足りない味や香りを得られるからだ。しかし、カレギュウの相乗効果はそれをさらに上回るのだ。
上回るはずだった。しかし、だ。君はもう食べただろうか。松屋の創業ビーフカレーをだ。それが販売開始となってからもう半年以上も経っているので、多くの人が既に味わっていることだろう。
創業ビーフカレーは美味しい。今までにないほどの旨みがたっぷりと溶け込んだ、ボリューミーなカレーだ。いくらかボリュームが強すぎて、それが苦手だという人も出てくるんじゃないかと危惧されるほどのものだ。
ところで、思い出してほしい。何故カツカレーが、カレギュウがこんなにも美味しいものであったのかを。
そう、カレーの持つ美味しさに、そこにはなかった別の美味しさが加えられることで、さらなる相乗効果が得られたからだ。だからそれぞれ別々に食べるよりも、一層優れた味わいを、素晴らしい体験を、我々は得ることができたのだ。
しかしどうだろう。創業ビーフカレーは美味しいのだ。既に牛肉の旨みが十分に染みわたっているのである。そこに牛めしの肉が加わる。もちろん美味しい。美味しいことは間違いないのだけれど、そこにかつての感動は無い。牛肉が補うべき肉の旨みが、既にふんだんにそこにいるのだから。だからカレーに牛肉が加わり、たしかに美味しさは増すのだけれど、それはただの足し算に過ぎない。100+100で200になる。それだけのことだ。
カレーには牛を乗せる。そこにはたしかに正義があった。
しかし、時代は変わったのだ。
我々は創業ビーフカレーを知ってしまった。あの旨みを知ってしまった。追い牛を必要としないカレーの旨みを。もう時は戻らないのだ。
カレギュウは美味しい。たしかに美味しい。しかしそこにはもう、かつてのような正義はない。
だから我々は探さなければならない。創業ビーフカレーに相応しい、新しいカレーのあり方を見つけ出さなければならない。思考停止してはいられないのだ。