居抜き店

仕事帰りにたまに行くつけ麺の店があった。
中太のストレート麺と、醤油ベースでとろみがかった濃厚なスープ。スープは馬鹿みたいに熱く、麺はキンキンに冷やされていて、特別に美味しいというわけではないが、丁寧に作り込まれいるのが感じられて、好きだった。

ある日気づくと、看板が担々麺を推すものにすげかわっていた。
看板以外の外装も内装も変わった様子はない。
流行りの新メニューを入れ、それを目立たせるようにしたんだろうと思った。

だけど、違った。

店内に入って、券売機も以前と変わらないものだった。
けれどそこに書かれたメニューは今までとはまったく違った。ラーメンもつけ麺もなくなり、数種類の担々麺だけが記されている。
もしかして、店自体が変わったのか。居抜きというやつだ。このときようやく気がづいた。
案の定、店員さんも違った。
あの、大きな声で、過剰に丁寧なお兄さんはいなかった。

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冷やし担々麺は、なんとも美味しそうな品が出てきた。
美味しそうなだけであって、美味しいわけではない。
豆乳の主張が強い。強すぎる。
ご家庭で作るアイデアレシピならばそれも面白いんだろうけれども。

 

 

 


それから1週間ほどが過ぎ、今日また店を訪れた。
今度は汁なし担々麺を注文してみた。

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相変わらず見た目には美味しそうだ。
しかし麺に箸を入れてみて、
すると麺がすべてくっついているではないか。
この美しい盛り付けを行っている間に、麺同士がくっついてしまっている。
茹で上がった麺を水洗いすることもなければ、スープや油を合えるようなこともしていないということだろう。

麺がくっつく程度のこと、気づいていないわけがない。
だけどそのまま提供している。
客を舐めてるなと思った。
見た目さえ良ければいいと考えているんだろう。
ふざけろよ。

お前は趣味の延長で作っているのかもしれないけど、こっちはうまいメシが食いたくて金払ってんだよ。
予算の都合上、時間の都合上できないことだってあるだろう。それは仕方ないと思う。
だけど、手抜いてんじゃねえよ。
できることやらないで手抜いて、見た目が良ければ満足するとでも思ってんのか。
見た目にそんなに拘るんだったら、居抜きなんてしてんじゃねえよ。
お前が居抜きで使っているその店は、前に入っていた店はな、いつ行ってもガラガラだったけど、徹底した温度管理で、一切妥協なんかしなかったんだ。
大してうまくもなかったけど、兄ちゃんの拘りがつまってたんだ。
よりにもよってこの店で、よくもこんな品を出せたもんだな。