本当にガルパンはいいのだろうか

結論から言えば、良かった。想像していたよりずっと良かった。危惧していたようなことはなかった。

 

 


白米を切らした。そのためAmazonでいつものあきたこまちを購入したのだけど、その際にうっかりとプライム無料体験を申し込んでしまったのだ。まあ、直ちに金がかかるわけでもないし、試しに使ってみようと思った。月に400円足らずのサービスなら、場合によっては継続利用してもかまわない。そうして見たのがガールズ&パンツァー 劇場版(セル版) | 動画 | Amazonビデオだった。

試合場面から始まった。何の説明も無い。しかもなんだ。カチューシャとダージリンが同じチームだ。これが何なのかわからないけど、楽しそうだからまあいいか。
楽しそう、というのはガルパンの大きな魅力だ。戦車という強大な武力を用いて敵を打ち砕く話なのだから、もっとおぞましい世界が描かれてもおかしくない。でも決してそうはならない。作品世界にも「危ない」という概念は存在するようだが、それが差し迫って描かれたところを未だ見たことがない。勇ましい砲撃音が鳴るも、どこか間の抜けたポップなマーチがそれを和らげる。本来は命をかけているはずの戦車戦だが、そんな様子は微塵もない。試合が終われば、誰も怪我を負った様子さえなく、笑顔で健闘を讃え合う。実に楽しそうだ。
概して男の子は派手なアクションが好きだ。プロレスが好きだったり、戦隊ヒーローが好きだったり、SFXが好きだったりしがちだ。でも、それが派手であればあるほど、危険が伴う。ダメな映画を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく。違う。僕らが見ていたいのは、希望に満ちた光だ。そう、光だ。そこには光がある。まぶしい笑顔がある。輝く青春がある。戦車道がある。私たちは誰も傷つけることなく、派手な戦闘と、かわいい女の子を見ることができるのだ。

映画の短い尺の中で、試合の時間がその大半を占めるのもすごいなと思った。スポ根作品であっても、試合になかなかここまで大きな尺を割けない。スポ根作品ではストーリーがより重視されるから、余計にそうなるのかもしれない。ガルパンにもストーリーが無いわけではないが、作品における重要度はいくらか落ちる。計ってはいないので印象論にすぎないけど、エキシビションと試合外のパート、大学選抜との試合が時間にして 1:1:2 くらいだったように思う。なかなか大胆な采配だ。こうした、物語よりもドンパチに重きを置いた構成が、脳が溶けると言われるひとつの所以だろう。
だけどガルパンが、頭を空っぽにしたまま満喫できる映画かといえば、それも少し違う。
まず、楽しむためには若干のコンテクストが必要だ。というかキャラが多い。テレビアニメに出てきた多くのキャラクターが、何の説明も無しに次々と出てくる。劇場版から見始める人なんていないだろうに野暮ったい説明から始まる謎映画とは違って、潔さを感じさせる構成だ。
さらには、戦車を知っていると理解が深まる。作中で出てくる型式や砲の大きさに対して、私は無知故に登場キャラクターと同じリアクションをとることができなかった。本編終了後に流れる秋山殿の解説でいくらか知識を得ることができるが、それを基にもう一度見直すとまた違った理解があるのかもしれない。あるいは、戦車の違いを理解し、誰が乗っているのかすぐにわかるようであればもう少し緊迫感を持って見られたことだろう。つまりは、何度も足繁く劇場に通っていたガルパンおじさんたちにも、それなりの意義があったと言っていいのではないか。