面白さとは

まず「ゆるキャン△」は危ういバランスの上に成り立っているなあという印象だった。それは今期もう一つのきらら枠である「スロウスタート」と比べての印象である。「スロウスタート」は完成されたバランスの上にある。確固たるキャラクター設定がなされており、それに似合った造形をしていて、それに応じた役割を担っている。すごくよく作り込まれている。
一方で「ゆるキャン」だ。これは危うい。主人公の二人だけ見ても、普通はこんなキャラクターデザインをとらない。各務原なでしこ。あのヴィジュアルでアホキャラだ。別にアホキャラはショートかツインテールかゆるふわロングじゃなきゃいけないなんて決まりはないんだけど、でもやっぱりどこかしっくりこない。もう見慣れたけど、第一印象の違和感が強かった。しまりんの髪も、キャンプ時には団子で確定なんだけど、学校では下ろしていることが多く、そうするとキャラクター性が弱まるので普通はわざわざそんな設定をとらない。こうしたキャラクター設定からして危ない橋を渡っているように見える。
物語中で描かれるネタもなかなか危うい。というか、ネタと呼ぶべきネタはかなり少ない。ごく日常的な会話の中に、クスリとする程度のネタが潜んでいるに過ぎない。野クルパートを除けば、わかりやすいボケ‐ツッコミの構図はほとんどない。日常会話での面白みというものは本来そういうものではあるんだけど、その面白みをメディアを通して伝えるということはそう簡単なものではない。ボケ‐ツッコミの構図があったほうがずっと伝わりやすい。だけど「ゆるキャン」ではそうしない。普通の会話の中で面白みを伝えることに挑戦し、そしてそれは上手くいっているように見える。絶妙なセンスだ。
ところで作者のあfろ氏の作品を追ってみると、Amazonにこんなレビューがあった。

作者様の作品出ている限りひととおり読ませていただきました

まどかをある程度知っている
オレンジ>不明局>たむら>>>ゆるキャン

以外
たむら>オレンジ>不明局>>>ゆるキャン

おもしろい順番ではなく、ぶっ飛んでいる順番はこんな感じではないかと
不明局の合う合わないで次にいくべきか判断つくんではないかと

ちなみに自分は全部好きですAmazon CAPTCHA

 
なるほどこれは興味深い。早速「シロクマと不明局」を購入した。するとどうだろう。これは私の想像とは違った。「不明局」のほうがはるかにわかりやすい。「不明局」は基本的に四コママンガであり、「ゆるキャン」よりもずっと笑いの構図がわかりやすいのだ。もしかするとレビュワーの言うわかりにくさとは、単にネタがスベっているだけなのではないか。いやしかし、レビュワーはあfろ氏のファンで、氏の全作を読破しているようだ。作者の意図するものが刺さらなかったというわけではないはずだ。ではわかりやすさとは、面白さとは何なのか。その謎を解明すべく我々はAmazonの奥地へと向かった。